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映画
2021.08.26
映画『犬部!』に思う
もう少しテレビ等での宣伝の時間があると良かったというのが正直な感想である。角川的には、あのようなちょっとコメディ調なイメージCM(多分パンフレットの表紙もそうであったと思われるのだが、映画館ではパンフレットを置いていなかったので購入することが出来なかった)でいきたいのだろうが、あのCMは失敗していたと思う。あれでは、コメディというイメージでしか受け止められない。実際の内容は、極めてシビアで重いものだったが、主役たちが楽しげに並んでひょうきんな格好などしているスチールには何とも違和感を感じた。
対象は若い女性たちである。彼女たちにペットを守りたいという意識を与えることが出来れば、客足は増加するはずだ。
知り合いの篠原監督の作品でなければ、このスチール写真で映画を観ることはなかっただろう。あのスチール写真からは、若者たちの軽い青春像は想像出来ても、深刻な命の問題までは想像することは出来なかった。
実際に映画を観始めて、その内容が犬の殺処分問題であることを知り「参ったな」と内心思った。幼少の頃より、動物愛護については、非常に強い意識があったものだから、こういう辛い内容は、観るのが耐えられないという心理からだった。
しかしながら、メイン主役の極めて前向きで意欲的な自己主張、そしてまたそれを理解する優れた指導教官の構図が、この気持ちを払拭させてくれ、その後からは、真剣に観ていった。
殺処分や実験動物の問題というのは、ピタゴラスの禁欲主義や、プラトンが理想国家のあるべき姿として菜食主義であることを提示したことなどを思い出させる。ピタゴラスが創設した教団では、動物を殺すことは殺人に、食肉は食人に等しいと考えた。プラトンは、神は人間の体に栄養を補給するために木と植物と種を創造した、肉食が始まったことで戦争が始まったと語っている。
古くからの大きな課題であったわけだが、このように一人の獣医の熱い思いによって、この世界の状況が僅かながらでも改善されていったことに、改めて喝采を送りたいと思う。