BLOG

2020.10.23

『タオと宇宙原理』〈60〉第一章 意識と科学 古代の叡智と量子仮説

◆インド哲学との類似性

 しかし、それはギリシャ哲学時代に遡(さかのぼ)ったようでもあった。だが現代物理学者たちは巧妙にそれを「神」とは呼ばない。物理学者としてのプライドがそれを許さないからである。そこで彼らは「宇宙意志」や「宇宙意識」などと呼ぶようになった、しかし、これはインドのヴェーダに出てくる純粋精神そのものの概念であった。実は、理論物理学者、中でも宇宙論や量子論をやる人たちが思考の参考書としてヴェーダやインド哲学や仏教や老荘を学んでいることは夙(つと)に知られている。因みに、近代の哲学者の大半も然りである。二十世紀最大の哲学者と称されるハイデガーの〈世界内存在〉や〈存在了解〉や〈超越〉またダーザイン(現存在)やダスマン(世人)などの思考には明らかに仏教哲学から影響を受けたと思われる「器世間(きせけん)」や「無我(むが)」や「凡夫(ぼんぷ)」や存在論などの概念が散見されるのである。二十一世紀に君臨するウィトゲンシュタインの有名な「語り得ぬものについては沈黙しなければならない」という哲学も、形而上学的質問に対する「無記(むき)」や「捨置(しゃち)」として無返答を貫いた仏陀の教えや「無我」を説く仏教の影響下にあるように筆者には思え、彼を巨人と称することには疑問を感ずる。

(『タオと宇宙原理』第一章 意識と科学 古代の叡智と量子仮説 インド哲学との類似性)