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2020.06.03

有機AIがもたらす未来と危機

 さらに近い未来において、人類は一つの危機に直面しなくてはならないことを理解しておく必要がある。それは感情を与えられた人工知能(AI)の存在である。天才スタンリー・キューブリックが1968年に公開した映画『2001年宇宙の旅』のストーリーよろしく、遂にコンピューターによって人類が削除される可能性が出てきたことである。それを回避するためには、絶対にAIに本物の感情をプログラムしないことだ。しなければ、人類はAIの支配者でいられるだろう。だが、必ず愚かな科学者がAIに〝本物〟の感情を植え付けるだろう。その時から人類滅亡のカウントダウンが始まることになる。

 これを回避するためには、人類の思考がいまの経済優先の哲学(価値観)から脱け出さねばならない。それはルソーが言うところの自然回帰である。知識偏重型の人類から、もっと感性豊かで正直な人類へと移行する必要がある。もちろん科学はさらなる発達をすることが望ましい。何より人びとの暮らしが豊かにならなければならない。それこそが老子が言う無為(無欲)の思想である自然哲学への回帰であり、感情というものの正しい価値へと立ち戻る作業でもあるのだ。それを為してこそ人類の知能を超えるAIと対等となり得るのであり、もしそれを可能ならしめることができなかったならば、人類はこの有機物で製造されたAIによって生命進化を邪魔するウイルスと見なされ削除されるであろうという想像の上に未来を私は見つめるのである。

 リアルに人類は2百年後には有機AIによって滅びているのかも知れないのだ。否、それはもっと早く訪れるかも知れない。

(『人生は残酷である』序章 未来人類は有機AIに滅ぼされる)