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2020.05.19

最新刊『タオと宇宙原理』序章その5

引き続き、現在、執筆中の最新刊『タオと宇宙原理』の序章「量子力学は仏教哲理『非存在』を学んでいた!」をご紹介する。

◆序章 ― この世は存在しない!

 量子力学は仏教哲理「非存在」を学んでいた!

 いま物理の世界では、存在について無だと言い始めた。時空間は存在しないという思いもしない説が語られるようになった。それらの説はいまや定説となりつつある。しかし、時間軸の中でしか自己認識できないと信じている人たちにはそれは理解し難い学説であろう。科学者のたわごとと感じるだろう。当然のことながら科学者の間でもそれが理解できない人は多い。

 実は、仏教はその科学的真理についてすでに二五〇〇年前に、禅定という特殊な精神状態の中でその答えを導き出していた、と言ったらあなたは驚くだろうか。それは後に解説する刹那滅という定理をもって仏教哲学の基礎を成していたのである。極めて厳しい論理展開の末にこの帰結に辿り着き、仏教教義の根幹を成すに到っている。そこには、この世もこの「私」も一切が存在しない無自性(絶対性の否定)の原理によって成立していることが導かれているのだ。後に説明する如く、この仏教の哲理を学んだアインシュタインら物理学者は、仏教のこの公理をヒントにこの物理世界を分析し、遂に量子の原理について解き明かすに到ったのである。この仏教哲理に影響を受けたという厳然たる歴史的経過を改めてわれわれは再評価しなければならないのである。老子のタオも事物を超越し、時空をも超越して、ある種のリアリティとして存在する。それは偉大な自然科学者たちの物理法則の発見と同等に、いやそれ以上に驚嘆に値するものであった。(つづく)