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2020.05.18

最新刊『タオと宇宙原理』序章その4

引き続き、現在、執筆中の最新刊『タオと宇宙原理』の序章「夢は現実か 現実は夢か」をご紹介する。

 夢は現実か 現実は夢か(続き)

 いつもの日常のありのままの自分、何らの違和感のない視覚世界、微塵の狂いもない現実がそこには存在していた。何一つ非現実の事象は見当たらなかった。いつもならすぐに気づくはずの夢独特の違和感は一切存在しなかった。私は、それが夢でないことを確信し日常に戻ったのである。それは、今この瞬間の現実と全く同じ状態にあった。あなたがこの本を読んでくださっている今そのものであったのである。そうやって、幾度もの確認をしたのち現実をまざまざと実感している最中、私は目の前の時空に、ガラスが割れるようにひびが入り、また、ページがめくられるように時空が剥ぎ取られていくのを、目の当たりにすることになったのである。

 あなたもそれを想像することはできる。これを読んでいる正にこの瞬間、あなたの目の前の空間にひびが入り現実が消え失せていくとイメージしてもらいたい。どんな感じであろうか。そのイメージがリアルであるならば、それは想像を絶する体験であるはずだ。それは存在の否定であり限りなく不安定な状況の出現を意味する。エントロピーの増大ということもできる。この瞬間のあなたが実は夢の産物であったとしたならば、あなたをあなたたらしめているあなたという存在はどこに行ってしまったのか、問わなくてはならない。私はその時に目が覚めた。が、呆然としていたのを昨日のことのように思い出す。それは、人生初めての信じ難い体験であった。現実と信じて疑わない現実が実は夢の産物であったという事実は、否定のしようがないほどにリアリティを持ち、強烈な重圧をもって意識がその事実を肯定した。あれは真実以外の何者でもなかった。

 ということは、この現実も夢かもしれないという事になる。いかなるリアリティも我々がそう感じるからと言って何らの実証性を有しているわけではないという事である。夢が現実であったのなら、この現実が夢であるかの蓋然性はゼロではない。それどころかもっとはるかに高い確率かもしれない。あなたも私と同じ夢をもし見ることがあったなら、何の躊躇もなくこのことばを理解するだろう。