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2020.05.15
最新刊『タオと宇宙原理』序章その1
現在、執筆中の最新刊『タオと宇宙原理』の序章の一部を茲にご紹介したい。
◆序章 ― この世は存在しない!
プログラムされた人類
この世とはどんな世界なのだろうか。目に映った世界がこの世だと、誰しもが信じて疑わない。本当だろうか。若い時には、日常に心が奪われ、日々の出来事に振り回される日々で、この世の存在と自分の存在との関係について考える、などということは、大半の人はすることがない。ところが、誰しも年を取ると、自分の意識と自分の身体とが別物であることを痛感させられるようになる。身体が思うように機能しなくなるからだ。若い読者は、この言葉を決して看過してはいけない。アッという間に「その時」は訪れるからだ。その時に、これから語る多くのことが、あなたを支えることになるだろう。
あなたは「何故ここに自分が存在しているか」考えたことがあるだろうか。あなたがあなたでしかないことに疑問を持ったことはないだろうか。筆者にとってそれは最大の難問だった。何故、自分は自分なのか。他者ではないのか―。巨大な問だった。あなたもあなたを演じているだけの「あなた」という人生の主役でしかない。あなたにとってはあなたの、筆者にとっては筆者の人生しか我々は生きることが出来ない。そして、その中心は常に「自分」である。
あなたは、その「自分」について真剣に考えたことがあるだろうか。筆者はこの自他の別に小学四年生の時からずっと悩むようになり、自然の営みを見つめながら人間という存在のあり様を思惟する道を歩むようになった。一人一人の生を観察していると、我々は一種のロボットのように思えてくる。誰しもに両親がいて、育てられる過程で同様の喜怒哀楽に襲われながら、知恵を付けていく。そして十歳で脳の大半が完成すると、二年後には思春期へと突入する。誰しもが同じパターンである。
人の生は、幼児の時の自己中心的な〈第一自我〉に始まり、五、六歳からの他者と敵対する〈第二自我〉、そして、思春期の渾沌とした〈第三自我〉。次に、青年期の衝き進む〈第四自我〉へと移行し、社会人や家庭人としての〈第五自我〉に入ると、自立、自活、愛情という、社会に目を向けた世界で心身を削りながら生き始める。そして、いよいよ更年期の〈第六自我〉に入る、身体に不調が出始める時だ。それに伴い、心までもが不安定になる。多くの中年自殺者を出すのもこの時である。家族との葛藤も大きく心身を傷付けていくことになる。さらに還暦を過ぎれば身体はいよいよ言うことをきかなくなる。
そして遂に、老人の境へと到る時が来る。〈第七自我〉の訪れである。人生の黄昏に突入する。一年一年が若い時の十年の速さで心身を老化させていく。それからは老い仕度が始まることになる。一日一日に感謝をする日々でもある。人によっては寝たきりとなり、苦難の時が訪れる。子に支えられる時でもある。そして「死」が迎えに来る。その時、〈第八自我〉が出現する。